実験4/物理学実験
想い出の名古屋工業大学

こひつじの家



 名古屋工業大学(名工大)に勤務していたときに授業を担当した「物理学実験」でおこなわれていた,実験4「ヤング率」の参考資料です。
 【注】実験内容等が変わっている可能性がありますので,あくまでも参考程度に見てください。
最終更新:2007-10-11


注意 机の配置
 ユーイングの装置は振動の影響を非常に受けやすいので,装置を乗せている机は,望遠鏡を乗せている机や隣接する班の机と接触させてはいけない。望遠鏡でものさしの目盛を読み取る測定時には,筆記は望遠鏡を乗せている机上でおこなう。

注意 ネジ類のゆるみ
 光てこ用の鏡に付いている3本の脚それぞれについて,ぐらつきを確認する。ぐらつきがあった場合は,後脚については脚を回してねじ込み,前脚についてはナットを回して締め付ける。
 鏡を固定している左右のネジは,鏡が不用意に回転しない程度にしっかりと締め付ける。

注意 巻き尺の目盛
 巻き尺の目盛は, mm ではなくて cm の単位だよ。


ヒント-1
 試料として用いた金属板の種類を,ノートにはっきりと記録する。金属の種類がわからないときは,五円硬貨の素材が真鍮だから,財布の中を見てみよう。

ヒント-2
 マイクロメータの目盛は読み取りミスをしやすいので,マイクロメータで測定する前に,ものさしかノギスによって予備測定をしよう。

ヒント-3
 マイクロメータの操作については実験1「ノギスとマイクロメーター」を参照する。

ヒント-4
 試料の幅〜分銅の質量と目盛の読みまでの各測定をおこなって各測定値の平均値を求めたら,次は平均値を式(3)と式(2)に代入して,試料のヤング率(最確値)を求める。そして求めたヤング率が正常であることを確認してから,残差や残差の二乗などを計算する。各測定をおこなっては残差や残差の二乗などを計算するのは,あまり良くない。その理由は,
(1) 求めた最確値から,その実験が成功か失敗かの判断ができることが多い。早目に判断した方が時間的ゆとりができる。
(2) 最確値の値が異常であれば再測定が必要な場合があるので,最確値を求めるのが遅くなると,再測定の時間がなくなってしまう危険性がある(誤差の見積もりは家に帰ってからでもできる)。
(3) 再測定をすれば,残差などの計算もやりなおしとなる。
というわけで,誤差を求めることよりも最確値を求めることの方がはるかに重要だ。重要なことは先にやろう。

ヒント-5
 ものさしによる測定は,テキスト11ページに書いてある方法によっておこなう。

ヒント-6
 紙に押しつけた脚の跡から光てこの腕の長さ r を測定する時は,ノギスの内側用ジョー(くちばし)を使用するとよい。

ヒント-7
 「分銅の質量と物差の目盛の読み」の測定時には,目盛を読み取ったら即グラフ上にもデータを記入して,グラフを目で確認することによって,読み取ったデータが正常なものかどうかをチェックする。この測定時には以下に示すようなトラブルや,目盛を読みまちがえたりすることが多いので,このようにして測定データを監視する。というわけだから,測定が終わってからグラフを作成しては手遅れになることもある。

グラフの異常 その 1
 「分銅の質量に対する物差の目盛の読み」は直線関係になるはずだが,途中で折れ曲がってしまう場合がある。これは鏡の前脚が曲がっていたために,鏡がある程度傾いたところから,曲がった脚がナイフエッジ E3 にあけてある穴の壁に強く接触してしまったために生じる。

グラフの異常 その 2
 「分銅の質量に対する物差の目盛の読み」の関係が直線からずれて,段差ができることがある。そして分銅を加えていくときと減らしていくときには,段差ができる位置が異なる場合もある。これは試料とナイフエッジE1E2が接するところや,ユーイングの装置と机が接するところが4点支持の状態になっているために,若干のガタが存在することによって生じる。グラフ上に段差は出来るが,直線部のグラフの傾きは変わらないので,補正が可能だ。

グラフの異常 その 3
 望遠鏡をのぞいている人が机に手や肘をつくことによって机が変型し,望遠鏡の方向がずれるために生じる。


参考 書物に載っているヤング率
 テキストの付表10「弾性に関する定数」は丸善の「理科年表」1990年版を転載したものだが,そこに掲載されている銅のヤング率 12.98×1010 Pa に対して,岩波の「理化学辞典」第5版では 11.00×1010 Pa となっていて,相当に異なる。テキストの付表10の注意書に「これらの値は製法や過去の取り扱いによってかなり異なる」と書かれているように,ヤング率などの弾性定数は「不純物の種類と含有量,製造方法,焼き入れ・焼きなまし・鍛練などの経歴,温度」などによって相当に変化することがありうる。


考えてみよう その 1
 この実験では sinαをα,tan2αを2αで近似して計算しているが,近似することによる誤差はどれくだいだろうか。これを D = 2 m,SS0 = 0.1 m,r = 0.03 m の場合で検討してみよう。
(1) 最初に近似をしないで計算すると,α = 1.4312°,δ = 0.7493 mm となる。
(2) 近似式を用いると δ = 0.7500 mm となる。
(3) 1) と 2) の違いは相対誤差で(0.7500−0.7493)/0.75 = 0.0009 となる。
(4) ここからは自分で考えてみよう。

考えてみよう その 2
 実際に試料を引っ張ったときの変量ΔLはどれほどになるだろうか。それから何がいえるだろうか。
 たとえば直径 d =1 mm,長さ L =1 m の黄銅線(ヤング率 E =10×1010 Pa)に質量 M =1 kg のおもりを吊るしたときの伸び ΔL を計算してみよう。
 この「考えてみよう その2」は,テキス第5版第5刷(2003年度)から「検討」に加えられた。
 ⇒ヒント

記:2005-04-20