最終更新:2009-11-17
新規作成:2007-12-05
2 あおり
垂直なものは垂直に
デジカメ実験室
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あおり
高い建物を近くから撮影すると,建物の上の方ほど縮んでいるように写る。上の方ほどカメラからの距離が遠いのだからあたりまえといえばそれまでであるが,なんだか不自然な感じがする。
図
5-1 23
mm
広角レンズで撮影した建物
図
5-1
は家の近所にある
12
階建てのマンションを,比較的ワイドな
23
mm
広角レンズで撮影した写真である。もっと遠方から撮影すれば少しはましになるかもしれないが,これ以上うしろに下がろうとすると,右手にある別のマンションがじゃまになってしまう。
それにしても,なぜ不自然な感じに見えるのだろうか?
実はこのように見えるのも,実際に見たときと写真を見たときの
画角の違いが大きな原因になっている。このことは,図
5-1
を大きな写真に引き伸ばし,撮影したカメラの位置,すなわち写真の下の方に目を近づけて建物を見上げてみると,自然な感じに見えることからもわかる。
とはいっても,一般的には小さな写真を正面から見るのが普通である。何とかならないだろうか?
この不自然さについてはかなり昔から問題になっていたようで,レンズの面と撮影素子(フィルム)との面をわざと傾けて撮影する
[あおり(煽り)]
という方法が考えだされ,あおり機構を持ったカメラが登場した。しかし今はデジタルの時代。ソフトウェアで画像処理をして,あおり効果を実現させることができるようになった。
画像処理ソフトの
[あおり]
機能を使って,図
5-1
を変形させたところ図
5-2
のようになった。ソフトウェア的な
[あおり]
は,画像の底面の幅は変えず,上へいくほど横に拡大するという単純な処理で実現している。
図
5-2 あおり処理をした写真
画面の都合で縮小した写真を載せてあるが,上の方が横に拡大されているのがわかる。図5-2の不要な部分をカット(トリミング)して,図5-3の写真が得られた。
図
5-3 あおり処理とトリミングをした写真
本来は地面に対して垂直である建物の縦の線が,写真上でも垂直になっていると,何か安心して見ることができる。多分に心理的なものが影響していると思われるが,やはりこのような写真が好まれるようである。
建物などを自然な姿で写真にする方法として,あおり機構があるカメラを用いたり,ソフトウェアで処理をすることは比較的よく知られているが,ここで私が考案した全く別の方法を紹介しよう。
図
5-4
は,同じ位置から
15
mm
の超広角レンズを使用して撮影した写真である。
図
5-4 15
mm
超広角レンズで撮影した建物
不思議なことに最初からあおりが効いているではないか! もちろん画像処理などはしていない。
原理は簡単である。[
レンズの歪み?]
のページで取り上げたように,撮影素子に平行な被写体は歪まない。ただし撮影するときに撮影素子と建物の面が平行になるようにカメラを構えることがコツである。すなわちファインダー
(あるいは撮影用のモニタ)
の中心に,目の高さにある物をもってくるようにする。カメラが傾いていてはまずいので,ファインダーの枠とファインダー内に見える建物の線とが平行になるように調節するとよい。この写真をトリミングをすることによって,図
5-5
に示す写真が得られた。
図
5-5 超広角レンズで撮影してトリミングした写真
「ファインダーの中心に,目の高さにある物をもってくる」方法というのは,建物を真正面から撮るときだけに有効なのではなく,さまざまな被写体に応用できる。次の写真(図5-6)は35mmの広角レンズで夕暮れ時に撮影した,近所の団地である。
図
5-6 広角レンズで撮影した団地
ファインダーの中心に目の高さの物をもってきたために,建物も給水塔も電柱も,地面に対して垂直なものはすべて垂直に写っている。