実験2/物理学実験
想い出の名古屋工業大学

こひつじの家



 名古屋工業大学(名工大)に勤務していたときに授業を担当した「物理学実験」でおこなわれていた,実験2「オシロスコープ」の参考資料です。
 【注】実験内容等が変わっている可能性がありますので,あくまでも参考程度に見てください。
最終更新:2007-10-11


注意 つまみの位置
 この実験では VOLTS/DIV VAR つまみと,SWP VAR つまみを右にいっぱい回しておく必要がある。そうしないと垂直軸感度(VOLTS/DIV)や掃引時間(TIME/DIV)が設定した値にならない。

注意 目盛の読み取り
 スケッチ上ではなく,ブラウン管面上で測定すること。スケッチ上から測定すると,スケッチを描くときの誤差(あいまいさ)と,スケッチから読み取るときの誤差がプラスされてしまう。


ヒント-1 読取精度は読取値の大きさで決まる!
 オシロスコープの目盛を読み取るときの最小値(最小読取目盛)は 0.1 div 程度だから,読取精度(読取値の相対誤差)は電圧等の読取値が 1.0 div のときには 0.1/1.0 = 0.1,読取値が 8.0 div のときには 0.1/8.0 = 0.0125 となって,後者の方が 8 倍も高精度となる。

(1) 交流電圧を測定する場合には,画面上の波形が上下にできるだけ大きくなるように,VOLTS/DIV(垂直感度切換)つまみで調節するとよい(ただし,ここでの実験では垂直感度が指定されているので,時間があったらやってみるとよい)。

(2) 周期を測定する場合には,1周期分ではなくて,画面上に現れているできるだけ多くの周期分で測定する。

  読取値が大きい方がよい例
 官製はがきの厚さをものさしで測ることにした。1枚だけを測ったところ約 0.2 mm というところまでしか求められなかった。しかし100枚重ねて測ったら 22.4 mm で,1枚あたりにすると 0.224 mm となった。なんと,ものさしによって 1/1000 mm の精度で測ることができたことになる。測定するときは,このように読取値が大きくなるように工夫することが大切である。


ヒント-2
 交流の周期は,波形の「山と山」や「谷と谷」の間隔ではなく,テキストの図 12 に示すように「0 レベルの水平軸を同じ傾きで切っているところ」の間隔で求める。山の頂上や谷底は丸みをおびているため,最大や最小になる水平位置は不明確なのだ。

ヒント-3 TRIG LEVEL つまみを活用する
 TRIG LEVEL つまみは,測定する交流の電圧がどのレベルになったら画面上に描写を始めるかを決める働きをする。これを回すことによって,たとえば「波高が 5.0 V の交流電圧について −0.4 V の位置からスタートさせる」という調整ができるので,画面上に波形をうまくおさめたりすることが可能となる。

ヒント-4
 設定II(信号 B)で交流電圧を測定する場合,
最小読取電圧は
  1 V/div × 0.1 div × 10 = 1 V
波高値の測定値は
  1 V/div × 3.8 div × 10 = 38 V
となる(アンダーラインが付いているところが有効数字)。
 1.0 V や 38.0 というように無意味な 0 を付けてはいけない。

ヒント-5
 オシロスコープの機器誤差 3% は意外と大きい。3% だけではピンとこないかもしれないが,1 メートルの物差しの狂いが 3 センチメートルほどといえばわかるだろう。実験で交流の周波数として 60.6 Hzが得られたとして,その 3% を計算すると
  60.6 × 0.03 = 1.8 Hz
が得られるので,有効数字を考慮した測定結果は読み取りの誤差がなかったとしても
  60.6 ± 2.0 Hz または 61 ± 2 Hz
となる。


参考 商用電源の周波数
 商用電源の周波数は,瞬時で 60.0±0.1 Hz 以内,1時間あたりで 60.00±0.01 Hz 以内,1か月あたりでは 60.00000±0.00001 Hz 以内になるように自動制御されている(1か月あたりの電気時計の狂いを1秒以下にすることが目標)。
 中部電力の資料より(1992年12月)

参考 乾電池の電圧
 マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池には 1.5 V という表示があるが,これは公称電圧という乾電池の種類を表す規格上の起電力で,実際の起電力ではない。乾電池の起電力は使用していなくても製造直後から徐々に低下していくが,マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池の場合,使用推奨期限内で未使用ならば 1.6 V 以上はある。本実験では電池の電圧を測定するだけで電流を取り出していないので,電池を使用したことにはなっていない。
 参考のために「使用推奨期限」をノートに書いておくとよい。

参考 交流電圧の波高値 V0 と実効値 Vrms の関係
 交流電圧 VV0sinωt の 2 乗を 1 周期間で平均した値の平方根 V02/√2 を電圧の実効値 Vrms という。実効値を用いると,抵抗 R に電圧をかけたときの仕事率は,直流電圧をかけたときと同様に Vrms2R で表すことができる。その証明を以下に示す。

 交流電圧V0sinωtを抵抗 R にかけたときに,交流 1 周期(2π)の間に抵抗で消費されるエネルギー E を求めると,

 EV02∫sin2ωtdtR  (0〜2πで積分)

  = V02π/R

となる。ここにVrmsV0/√2 を代入すると,

 E = 2πVrms2R

が得られ,両辺を 2πで割って単位時間あたりのエネルギー,すなわち仕事率 W になおすと,

  WVrms2R

となる。

記:2005-04-20