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最終更新:2009-11-17
新規作成:2007-12-03
4 魚眼レンズ
とにかく広い範囲を撮りたい
デジカメ実験室

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 広い範囲を撮影するためには焦点距離の短いレンズを使用すればよく,このような目的で作られたレンズを広角レンズという。特に広い範囲を撮影することができるレンズを超広角レンズということもある。私が使用している最も広角なレンズは15mmで,写真の長辺に対する画角が100度となっている。また現在市販されている最も広角なレンズは12mmで,長辺に対する画角が112度ほどもある(レンズの焦点距離は35mm判換算値で示している)。
 一方,人間の目の視野はかなり広く,左右では180度を越え,上下でも180度に近い。これだけの視野に入っているものを12mmの超広角レンズを使ってすべて撮影しようとすると,適当にカメラの向きを変えながら4回もシャッターを押さなければいけない。
 それならばもっと短い焦点距離のレンズを作ればよいと思われるかもしれないが,視野の周辺部での歪みが大きくなってしまったりするので,技術的にむずかしいようである。それに無理をして焦点距離を短くしたところで,思ったほど視野は広がらない。

 広い範囲をもっと簡単に撮影する方法はないだろうか。ここでひとつ実験をしてみよう。
 身近にあって光をよく反射する球面体をさがしたところ,水銀温度計の水銀だめがみつかった。水銀だめを見てみると,丸っこい顔が中央にあって,部屋の中の広い範囲が映っていた。温度計を部屋の中に立てて置いて,水銀だめを撮影したのが図4-1である。
球面体に映った部屋
4-1 球面体に映った部屋

 水銀だめに映っている中央の黒くて丸いものはカメラのレンズで,レンズを下から支えている私の手も見える。驚くのは視野の広さで,ざっと見積もっても左右300度以上が映っている。画像は歪んでいるが,このようい球面体の鏡を使えば,とにかく広い範囲を撮影すことができることがわかる。鏡像であるので左右が反転して写ってしまうが,ここには補正したものを載せてある。

 画像が歪んでもよいから,とにかく広い範囲を撮影するという目的で作られたものに魚眼レンズがある。魚眼レンズといっても魚の目の形をしたレンズという意味ではなく,「水中にいる魚が上を見上げたときに,水面上の景色全体が円形の視野の中に見える」ような写真が得られるレンズである。図4-2は魚眼レンズで撮影した私の部屋である。
魚眼レンズで撮影した部屋
4-2 魚眼レンズで撮影した部屋

 円形の視野の中に,左右も上下も,すなわち全周にわたって180度の範囲が写っている。魚眼レンズ独特の歪みはあるが,これなら人間が一度に見ることのできる範囲を1枚の写真に収めてしまうことができる。全天の雲の分布,部屋の中,離れて撮ることができない建造物などを撮影したりするのに便利なレンズである。
 魚眼レンズは歪みをうまく利用しているレンズともいえるが,その歪みは超広角レンズで撮影した写真が歪んだように見えるのとは,かなり対照的である。
15mmの超広角レンズで撮影した部屋
4-3 15mmの超広角レンズで撮影した部屋

 図4-315mmの超広角レンズで撮影した部屋であるが,写真の周辺にいくに従って,対象物が引き伸ばされたように見える。逆にいうと,写真の中央にある対象物が小さく見える。それに対して魚眼レンズの場合は,カメラから等距離にある対象物は同じような大きさで写っている。

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