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最終更新:2009-11-17
新規作成:2007-12-02
2 画角
写真を見るのに適切な距離
デジカメ実験室

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 図2-1は,焦点距離15mmの超広角レンズで撮影した私の部屋である。超広角レンズを使用したためにかなり広い範囲が写っている(レンズの焦点距離は35mm判換算値で示している)。
 けれどもよく見るとキーボードなどが歪んだように写っていたり普通のテレビが横長画面になっていたりして,なんだか不自然な感じがする。その理由については[レンズの歪み?]のページで説明したとおりであるが,ここでは「本当に歪んで写ってしまった」のか,それとも「歪んだように見えるだけ」なのかを調べてみることにする。
15mmレンズで撮影した部屋
2-1 15mmレンズで撮影した部屋

 図2-1をクリックするとディスプレイ全体に広がるような大きな写真が現れると思うが,画面にぐっと目を近づけてその写真を見るどのように見えるだろうか?
 このとき片目は閉じて,見る方の目をディスプレイの中央付近に持ってくることが大切である。ディスプレイから目までの距離はディスプレイの大きさによって違うが,17インチで14cm,20インチで17cm,24インチワイドで22cmほどがよい。写真の隅の方を見るときは,顔は動かさずに目玉だけをきょろきょろと動かすようにする。見終わったら,キーボードから[Ctrl]+[W]を押すか,マウスでウィンドウ右上の[X]をクリックすれば大きい写真は消える。

 超広角レンズで撮影した写真を大きく描写して,その写真に近づいて見ると,驚くような臨場感を味わうことができるはずである。キーボードだって歪んでいないし,テレビも横長ではなくて普通の画面に見える!
 超広角レンズで撮影すると被写体が歪んだように見えたり,写真の端にいる人が太って見えたりするのは,その写真を見る距離に関係がありそうである。

 ということで,撮影したレンズの焦点距離,写真の大きさ,見る距離との関係について調べてみることにした。
 図2-2[レンズの歪み?]のページにあった[円柱を写す場合の図]と同じであるが,まずはこれをを見てみよう。すると確かに撮影素子上に写っている2つの被写体の大きさが違っていることがわかる。ではレンズの位置から撮影素子に写っている像を見たとしたらどうだろうか。
 人が目で見たときの大きさは,視角(ものを見込んだ角度)で決まることがわかっている。そうするとレンズの位置から見た場合は,物体Aの大きさと撮影素子上の像A'の大きさは等しく,物体Bの大きさと像B'の大きさは等しいことになる。レンズの位置から物体Aや物体Bを眺めたら正常に見えるのであるから,レンズの位置から像A'や像B'
を眺めても正常に見えてよいはずである(レンズによって像が倒立する問題や,鏡像の問題は無視しよう)。
円柱を写す場合
2-2 円柱を写す場合

 では撮影素子上の像ではなく,ディスプレイ上の写真やプリントした写真を見る場合はどうであろうか。まず画角について説明してから本題に入ることにしよう。

 レンズを通って入って来て撮影素子上に像を結ぶことができる最も外側の光線がはさむ角度を画角といい,撮影素子の大きさ(長さ)をw,レンズの焦点距離をfとすると,画角αは,
α2tan-1[(w/2)/f](2-1)
で計算することができる。
 図2-3は焦点距離が異なる2種類のレンズを通って撮影素子に入っていくる最も外側の光線を描いたもので,レンズL1の焦点距離f1はレンズL1から撮影素子Pまでの距離,レンズL2の焦点距離f2はレンズL2から撮影素子Pまでの距離である。 レンズL1を使用したときの画角がα1,レンズL2を使用したときの画角がα2となる。なお被写体は十分に遠方にあるものとする。
 図を見ると,レンズの焦点距離が長ければ画角が狭くなり,焦点距離が短ければ画角が広くなることがわかる。焦点距離の長い望遠レンズの画角は狭く,広い範囲を写すことができる広角レンズの焦点距離は短い。
画角の説明図
2-3 画角の説明図

 画角は写真を見る場合にもあてはめることができ,その場合の画角αは写真の大きさ(長さ)をw,写真から目までの距離をfで置き換えることで計算できる。
 これまでに述べてきた理由から,写真を見るときの画角が写真を撮影したときの画角と同じであれば歪んだりせず,自然に見えることになる。超広角レンズで撮影した写真は画角が非常に大きいので,撮影したときと同じ画角で見るためには,よほど大きな写真でないかぎり,かなり接近しなくてはいけないことになる。

 具体的に,焦点距離15mmの超広角レンズで撮影した写真を正しく見るための距離を求めてみよう。
 まず撮影時の画角であるが,撮影素子の大きさ(長さ)として35mm判フィルムの横幅36mmを式(2-1)に代入して計算すると,ほぼ100度が求められる。次にこの写真を17インチのディスプレイ(画面幅27cm)にできるだけ大きく表示させる場合で計算してみると,画角が100度になるためには画面から14cmの距離から見なくてはいけないことになる。こんなに近くから見るのは,たとえ目がよい人であっても,ちょっと辛いのではないかと思う。さらにこのページの最初に載せた,幅が640ピクセルの写真となると,ディスプレイ上での幅が20cmにもならないため,正しく見るための距離は8cm以下になってしまう。普通の距離から見た場合は,画角が撮影時と違いすぎるために,歪んだように見えてしまって当然なのである。

 超広角レンズで撮影した写真をリアルに見るためには,現在の平均的なディスプレイは力不足である。将来,幅が数メートルもあるようなディスプレイが手軽に利用できるようになれば,超広角レンズで撮影した写真をもっともっと楽しむことができると思う。

 まとめとして,焦点距離fのレンズの撮影した写真の画角α,写真を見る最適な距離Dと写真の長辺の長さwの比,写真をL(長辺127mm),はがき(長辺148mm),A4(長辺297mm)にプリントして見る最適距離の関係を表2-1に示しておく。ディスプレイに表示した写真は大きさがさまざまであるので表には載せなかったが,比D/wから簡単に計算できるし,表2-1からもおおよその見当がつくと思う。

2-1 写真を見る最適な距離
焦点距離f画角αD/wLはがきA4
   15mm 100°  0.42  5cm   6cm  12cm
   20  84  0.56  7   8  17
   28  65  0.78 10  12  23
   35  54  0.97 12  14  29
   50  40  1.39 18  21  41
   75  27  2.08 27  31  62
  100  20  2.78 35  41  83
  135  15  3.75 48  56 111
  200  10  5.6  71  82 165
  300   7  8.3 106 123 248

 人物写真を撮影する場合,50mm程度の標準レンズよりも,むしろ長めの75mm100mmなどを使うとよいといわれている。これは写真を見やすい距離に置いたときに自然な姿を見ることができるからである。表2-1を見るとそういう理由もなんとなくわかる。

 300mmの望遠レンズで撮影した次の写真(図2-4)は,線路に沿って建っている電柱がごちゃごちゃと接近しているように見えるであろう。広角レンズで撮影したときとは反対に,写真を見る距離が近すぎるためである。もっとも望遠レンズは「望遠鏡で見た感じに写したいときに使用する」のであるから,わざわざ写真を遠くから眺めては意味がない。
300mmの望遠レンズで撮影した景色
2-4 300mmの望遠レンズで撮影した景色

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