新規作成:2009-11-17
7 液晶モニターの問題点
ファインダーとして使う場合
デジカメ実験室
トップページ >
科学と技術の部屋 >
デジカメ実験室 >
液晶モニターの問題点
液晶モニターを見ながらの撮影
下の写真を見比べてみよう。
|
|
|
図7-1 ファインダーを見ながら撮影
|
|
図7-2 モニターを見ながら撮影
|
左
(図
7-1)
はファインダーをのぞきながらカメラを構えている少女
(1960年代に撮影),右
(図
7-2)
は液晶モニターを見ながらデジカメを構えている女性である。デジカメが登場するまでは左の写真ような構え方をするのがあたりまえだったが,最近はデジカメだけではなく,カメラ機能付携帯電話の普及にともなって,右の写真ようにカメラを差し出すように構える姿を多く見かけるようになった。私はデジカメ
FD-7を使用し始めたときに,液晶モニターを見ながら構えることになったが,当時愛用していたフィルム式一眼レフに比べて,
(1) 細かいところまではっきりと見えない。
(2) 太陽光の元など非常に明るいところでは画面が見づらい。
(3) 特に望遠にしたときや対象物が動いているとき,対象物がなかなか視野に入らない。
(4) カメラをしっかりと構えることができない。
という点で,使いにくさを感じた。
液晶モニターが小さすぎる
液晶モニターの画面をはっきり見るためにはデジカメをできるだけ目に近づけた方がよいが,目が焦点を調節できる範囲には限度があるので,近づけすぎるとかえってはっきりと見えなくなる。はっきりと見える最も近い距離を近点というが,近点は人によって異なり,一般に若い人の方が近くまではっきりと見ることができる。しかし近点あたりを見つめていると目に負担がかかるので,光学関係では「近くを楽に見ることができる距離」として
[明視の距離]
=
25
cm
を定めている。それでも年齢をかさねると近点が明視の距離を越えるようになったりするので明視の距離は目安にすぎないが,仮に明視の距離だけ離して
3
インチ型のモニターを見たとすると,[見かけの視野]
は左右の幅が約
14
度と小さく,
L判
(幅
127
mm)
の写真を
50
cm
ほど離して見る大きさでしかない。デジカメの大きさからしても,モニターをこれ以上大きくするのはむずかしいと思われるが,できればもっと大きいモニターがほしい。
参考までに私が所有しているカメラについてファインダーの見かけの視野
(横幅)
を調べてみたところ,コニレットの
レンジファインダーが
31度,フィルム式一眼レフ
α5700iのファインダーが
28度,デジタル一眼レフ
α100が
24度,デジタル一眼
GH-1の
EVFが
28度となっていた。いずれも
3インチ型のモニターを明視の距離
(25
cm)
だけ離して見たときの視野角
14度に比べると,かなり広い。逆に,たとえば視野角
28度で見るためには,3インチ型モニターを目から
12
cm
まで近づける必要がある。
液晶モニターの画素数が少なすぎる
人間の目の解像度は,角度にしておよそ
1
分といわれている。これは明視の距離
(25
cm)
にある対象物を
0.07
mm
まで見分けることができる能力ということになる。明視の距離にある
3
インチ型モニターの見かけの大きさが左右約
14
度ということから単純に計算すると,横幅については
14
度÷1
分=840,すなわち横に
840
画素あればよいということになるので,画面の横と縦の比が
4
:
3
の場合,総画素数は
840×840×3÷4
から,およそ
50
万画素となる。モニターをもっと近くから見ることも考慮すれば,もっと多い方がよい。ところが現在
(2009年夏)
発売されているデジカメの多くは
10万画素以下で,アナログテレビの
30万画素にも満たない。
参考までに,パソコンのディスプレイとしては大きめの
20インチ型やフルハイビジョンテレビでは
200万画素ほどにもなるが,これでもデジカメが搭載している撮影素子の画素数に比べると少ない。
構え方の問題
図
7-3
と図
7-4
は,ファインダーをのぞきながらカメラを構える姿勢と,モニターを見ながらカメラを構える姿勢を真横から見たところである。
|
|
|
図7-3 ファインダーをのぞく
|
|
図7-4 モニターを見ながら構える
|
モニターを見ながらカメラを構える姿勢は見るからに不安定な感じがするが,撮影した写真には違いが現れるのだろうか。それを調べるために,東の方の空に高度30度ほどのところに出ている月を,ズームレンズの望遠端で撮影してみた。使用したカメラはPanasonicのDMC-GH1で,レンズの焦点距離は140mm(35mm判換算280mm),シャッタースピードは1/60秒,手ぶれ補正はOFFにした。フォーカスはカメラを三脚に固定してマニュアルでしっかりと合わせ,以後はフォーカシングリングに手を触れないように電源を入れたまま使用し,三脚使用 → ファインダー → モニター → ファインダー → … → モニター → 三脚使用の順に撮影した。
図
7-5 三脚とレリーズを使用
図
7-6 ファインダーをのぞきながら撮影
図
7-7 モニターを見ながら撮影
図7-5は三脚とレリーズを使用して撮影した月,図7-6はファインダーをのぞきながら撮影した月,図7-7はモニターを見ながら撮影した月である。いずれもオリジナル解像度のままでトリミングしてある。
写真を見比べると,モニターを見ながら撮影したときの方がぶれていることがわかる。このことは,カメラを構えていたときに,モニターに映し出された月の方がファインダー内の月に比べて大きく揺れていたことからも想像できた。やはり腕を伸ばしてカメラを構える姿勢には問題がありそうである。特に長焦点の望遠レンズを備えたデジカメには,液晶モニターだけではなく,ファインダーが必要であろう。