最終更新:2017-07-26
スタート:2009-06-12
9 ミラーレス一眼デジカメの登場
デジカメ実験室
 EVFを用いた新登場のミラーレス一眼デジカメと,従来からあるミラーを用いた一眼レフを,ちょっと比べてみた。
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 2008年9月,PanasonicLUMIX DMC-G1というマイクロフォーサーズ規格の一眼デジカメを発表した。従来からある一眼レフとは違ってミラーを使わず,144万ドット相当の高解像度EVFを採用するということで,そのような方式のカメラが登場することをかなり以前から心待ちにしていた私の胸は高鳴った。
 いわゆる一眼レフ(ミラー式)のファインダーは,レンズから入って来た光をミラーで反射させてフォーカシングスクリーン(焦点板)に結像させ,その像を接眼レンズで拡大して見るという構造になっている。しかしこのままではレンズから入って来た光はフィルムや撮影素子に届かないので,シャッターを切った瞬間にミラーが跳ね上がり,露光が完了したら元の位置に戻る[クイックリターンミラー]を使用している。
DMC-G1K
9-1 LUMIX DMC-G1
 これに対してEVFを使用したカメラ(ミラーレス)では,図9-2に示すようにレンズからの光は常に撮影素子に入射し,撮影素子から出力された電気信号はファインダーをのぞくときはEVFに送り,シャッターを切ったときは画像信号として使用すればよいので,ミラーは必要ない。
ミラーレス構造
9-2 ミラー式とミラーレスの構造

 レンズ交換が可能なフィルムカメラの場合はミラー式がベストだったことは理解できるが,デジタルになってもフィルム時代の方式を引きずったミラー式ばかりが次々に登場することに疑問をいだいていた私にとって,ミラーレスの登場は,まさに朗報だった。
(写真と図はPanasonicより)

 2006年の夏,それまで使用してきたデジカメ,MINOLTADiMAGE 7iが壊れかけていたので,SONYα100というデジタル一眼レフを購入した。ぜひ欲しかったEVF(ミラーレス)のレンズ交換可能カメラは,まだ存在しなかった。なお私が一眼レフとしてα100を選んだ理由は,MINOLTAのフィルム一眼レフαシリーズと何本かの交換レンズを持っているので,そのレンズが使用できることだった。
 α100を購入して2年あまりが経過したころ,先に書いたように,初のミラーレスのレンズ交換が可能なデジカメLUMIX DMC-G1が発売されることになった。そのカメラが発売されることを知ったとき,ぜひ手に入れたいと思ったが,半年後に動画機能を搭載したモデルが発売されるとのことだったので,その新しいモデルLUMIX DMC-GH12009年の初夏に購入した。
 図9-3は,一眼レフα100とミラーレスのGH1を並べて写した写真で,どちらにも10倍程度の高倍率ズームレンズが付けてある。
α100とGH1
9-3 α100GH1

ミラーレス一眼カメラの特徴
 ミラーを用いた一眼レフ式デジカメと,ミラーレス一眼デジカメには,それぞれ長所や短所があると思われる。ここでは私の使用経験などをもとに,ミラーレス一眼デジカメについての特徴をとりあげてみることにした。

 ▲小形軽量
 図9-2を見ると,一眼レフとミラーレスの違いがよくわかるが,ミラーレスは,複雑で容積も重量もある光学部品ががなくなったということで,小形軽量化が可能である。

 ▲ファインダー像の拡大が可能
 ファインダーに表示される像はけっして大きくはなく,特にマニュアルで焦点を合わせるときには像が小さすぎるために細部を十分に確認することができない。ミラー式の場合は,必要があれば拡大鏡[マグニファイヤー]を使うことになるが,いちいち取り付けたり取り外したりする必要があることや像の拡大率も2倍程度しかなく,十分とはいえない。それに対してミラーレスでは撮影素子上の任意の位置の画像を切り出して表示させればよいので,付属品などを付けることなく,十分に高倍率の像が表示できる。この機能は非常に重宝している。

 ▲ファインダー内でアフタービューが可能
 シャッターボタンを押した直後に,撮影した画像をファインダー内に表示させる機能を[アフタービュー]というが,ミラーレスでは画像がファインダー内に表示されるので,カメラを構えた姿勢などを変えることなく,撮影した写真を直ちにチェックすることができる。

 ▲ファインダーを使って動画の撮影ができる
 ミラー式一眼レフでも動画を撮影できる機種があるが,残念ながらファインダーをのぞきながら動画を撮影することはできない。動画の撮影中はミラーが上がったままになるのでファインダーは使用できず,もっぱら液晶モニターを見ながら撮影しなければいけない。動画を撮影するときは「一眼レフではなくて,レンズ交換ができる液晶モニター付デジカメ」に格が下がってしまうことになる。液晶モニターの問題点でも述べたように液晶モニターを見ながらの撮影は欠点が多く,特に速く移動するものを捕らえるのはなかなか困難である。それに対してミラーレス一眼デジカメは,本来の一眼デジカメとして,すなわちファインダーをのぞきながら動画を撮影することができる。

 ▲ミラーショックがない
 クイックリターンミラーはカメラ本体に比べると十分に軽いが,それでもミラーに高速の回転運動を与えたときとミラーの動きが停止したとき,カメラ本体はその反動で微小ながら回転運動をする。[ミラーショック]といわれるこのカメラ振れは,撮影素子の解像度が高くなってきた現在,問題視されるようになってきた。それに対してクイックリターンミラーを使用しないミラーレスにはミラーショックがなく,ミラーの動きに伴う音も発生しないので,シャッターを切ったときの音が比較的静かである。ただし現在のミラーレス一眼デジカメもフォーカルプレーンシャッターを使用しているので,それによる振動やシャッター音は残っている。

 ▲スクリーンの交換が不要
 一眼レフは,ファインダー用の像をフォーカシングスクリーン(焦点板)の上につくっている。スクリーンは基本的には表面に細かい凹凸があるガラス板でできているが,ピント合わせがしやすいスクリーン,構図を決めるのに適したスクリーン,方眼が入ったスクリーンなど,いろいろのタイプがあって,高級な一眼レフのなかには,目的に合ったスクリーンに交換できるような機構をもっているものもある。これに対してミラーレスは,自由なデザインの模様をソフトウェアでつくってEVF上に表示させることができるので,利用者は用意されているデザインの中から選択するだけで済み,スクリーンを交換するという手間がいらない。

 ▼ミラーレスの問題点
 たくさん長所のあるミラーレスだが,まだまだ改良の余地がある。像の質はよくなったといっても,まだまだミラー式の一眼レフの方が良い。高速で動いている被写体を見ていると表示の遅れを感じるし,炎天下の非常に明るいところでは画像がやや暗く感じるという問題もある。今後の技術を期待したい。

α100GH1の比較
 私が所有しているミラー式一眼レフα100と,ミラーレス一眼デジカメGH1を使って,シャッター音の違いと,月面を撮影した像の違いをテストしてみた。

 ▲シャッター音の比較
 α100GH1では,撮影素子の前を幕が高速で走るフォーカルプレーンシャッターを使用している点は共通しているが,GH1にはクイックリターンミラーという機械的な可動部分がないという点では異なっている。
 テスト日時:2009-06-12
 録音機:Roland社のEDIROL R-09
 騒音計:CUSTOM社のSL-1352(A特性のピーク値を測定)
 カメラと録音機,カメラと騒音計の距離:30cm
 シャッタースピード:1/125
 測定回数:3回ずつ
 テストした結果,ピーク騒音レベルの平均値はα10074.5dB,GH167.0dBとなった。やはりクイックリターンミラーを使用しているα100の方が2倍ほど 音の大きさ,すなわち音圧の比は,
 10(74.5-67.0)/202.37
で表される。
大きい音がした。

α100のシャッター音

GH1のシャッター音

 ▲月面写真の比較
 GH1を購入してから5日目の早朝,窓から比較的くっきりとした月が見えたので,α100GH1で撮り比べをした。どちらも三脚とレリーズ使用した(写真にはEXIF情報が残してある)。
 α100の撮影日時:2009-06-15 03:12
 GH1の撮影日時:2009-06-15 02:05
 α100のレンズ:18-200mmズームの200mm,F6.3(35mm判換算300mm)
 GH1のレンズ:14-140mmズームの140mm,F5.8(35mm判換算280mm)
 α100の原画像サイズ:3872×2592
 GH1の原画像サイズ:4000×3000
  以下は共通
 シャッタースピード:1/60s
 ISO感度:100
 ホワイトバランス:太陽光
 手振れ補正:OFF
 左(図9-6)がα100,右(図9-7)GH1で撮影した月面で,どちらも原画像をトリミング(切り出し)したものだが,見比べるとGH1の方が鮮明に写っていることがわかる。最初,フォーカスは両方ともマニュアルで合わせるつもりだったが,α100の方は一所懸命に合わせたつもりだったのに10枚ほど写した全てのピントが甘かった。ファインダーで見る月はあまりにも小さく,ピントが合っているのかどうかよくわからなかった。結局ここに掲げた「オートフォーカスで写した写真」が最も鮮明だった。それに対してGH1のピント合わせは実に楽だった。EVFの像を拡大することによって,月面はここに掲げた写真ほどに大きく見えるため,細かくフォーカスを調整することができた。
 両者の違いは,フォーカス以外にも,一眼レフで発生するミラーショックの影響も考えられる。
α100で撮った月
9-6 α100で撮った月面
GH1で撮った月
9-7 GH1で撮った月面